税理士・米国公認会計士 林 正和(Tax Accountant・USCPA Washington Masakazu Hayashi)

日本とアメリカの税法の違い【予定納税】

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日本とアメリカの予定納税を比較し、相違点について、税理士・USCPA(米国公認会計士)が解説します。

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個人(individual)の予定納税

概要

日本の個人の予定納税(estimated tax)の趣旨は、次のように説明されています。

予定納税は、その年の5月15日現在において確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上となる方について、その方が一時に税金を納付した場合の負担感を緩和することや、国の歳入を平準化する目的から、その年の所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付しなければならないとされている制度です。

国税庁 No.2040 予定納税

この予定納税と同様の制度がアメリカにもあります。ただし、税額の計算方法・納付回数に違いがあります。

日本の予定納税

前年分の所得金額や税額などを基に計算した金額(予定納税基準額)が15万円以上となる場合に予定納税が必要となります。予定納税とは、所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付する制度です。予定納税は、予定納税基準額の3分の1の金額を、その年の第1期(7月)第2期(11月)にそれぞれ納付します。

米国の予定納税

ある年の支払予定税額が$1,000を超え、かつ、源泉徴収等で法定年間支払額が支払われていない場合は、予定納税が必要となります。

例えば、個人事業主は上記に該当すると予定納税の義務があります。これに対して、会社員は毎月の給与から税金が源泉徴収されています。そのため、会社員の方で給与収入以外の収入がない場合は、通常、予定納税の必要はありません。この点は、日本の予定納税と同様です。

次の①~③のいずれか小さい金額まで納付されていれば、法定年間支払額が支払われていることになります。

① 本年の税額の90%
② 前年の税額の100%(高額所得者の場合は、100%ではなく110%となります)
③ 本年の各四半期を通じて換算された年間課税所得額より求めた税額の90%

個人の予定納税は、日本では年2回のところ、アメリカでは年4回となっています。通常、4月15日、6月15日、9月15日、翌年1月15日の年4回に分けて、法定年間支払額を予定納税します。納期限が土曜、日曜、祝日などの休日のときは、その翌日が納期限になることも、日本と同様です。

予定納税は、Form 1040-ESを使って行います。

法人(Corporation)の予定納税

概要

法人にも、日本とアメリカに予定納税の制度があります。法人の予定納税の場合も、税額の計算方法・納付回数に違いがあります。法人の予定納税は中間納付とも呼ばれています。

日本の予定納税

1、予定納税の有無・予定納税額

予定納税額が10万円を超える場合(前事業年度の確定した法人税額が20万円を超える場合)は、予定納税が必要になります。日本の予定納税の方法には、次の2つがあります。

(1) 前年度の実績による予定申告

前事業年度の法人税額をもとに、予定納税額を計算します。

・前事業年度の法人税額/前事業年度の月数×6か月

上記の金額が10万円を超える場合に、予定納税が必要になります。

(2) 仮決算による予定申告

事業年度開始の日から6ヵ月間を一事業年度とみなして仮決算を行う方法です。
この仮決算に基づいて中間申告を行い、予定納税すべき法人税額を納付します。

ただし、次の場合には上記(2)の仮決算による申告はできません。
① 上記(1)の前年度の実績による予定申告により計算した額が、10万円以下である場合。
② 上記(1)の前年度の実績による予定申告により計算した結果、納付すべき税額がない場合。
③ 上記(2)の仮決算により計算した金額が、上記(1)の前年度の実績による予定申告により計算した金額を超える場合

2、納付期限
予定納税の納付期限は、事業年度開始の日以後6ヵ月を経過した日から2ヶ月です。

米国の予定納税

1、予定納税の有無・予定納税額
予定納税額が$500以上であると見込まれる場合、予定納税の必要があります。その場合、法定年間支払額を年4回に分けて納付します。大規模法人でない通常の法人の場合、法定年間支払額は次のいずれか小さい金額となります。

(1) 当事業年度の税金の100%
(2) 前事業年度の税金の100%(前年度が12ヵ月あり、税金を支払っている場合に採用できる)
※ 季節要因等で1年の間に所得の変動がある場合は、別の計算方法があります。

2、予定納税期限
法人の予定納税は、日本では年1回のところ、アメリカでは年4回となっています。予定納税期限は、暦年課税の場合、4月15日、6月15日、9月15日、12月15日の年4回になります。

根拠法令等

所得税法 第104条(予定納税額の納付)

法人税法 第71条(中間申告)

26 U.S.C. § 6655 – U.S. Code – Unannotated Title 26. Internal Revenue Code § 6655. Failure by corporation to pay estimated income tax

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