日本とアメリカの交際費等を比較し、相違点について、税理士・USCPA(米国公認会計士)が解説します。
概要
日本の交際費等は、法人税法上、次のように定義されています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。
国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
交際費等は、会社が収益を上げるために必要な費用です。しかし、課税の公平や税収の安定といった観点から、日本では損金計上に一定の制限がかけられています。アメリカでも同様に一定の制限がかけられています。
交際費等の区分について
日本の場合
交際費等の定義をみて分かるように、日本では接待交際費となるものを、「交際費等」としてまとめて扱っています。つまり、飲食費、お中元、お歳暮や取引先とのゴルフなどをまとめて「交際費等」とし、損金算入額の計算を行います。ただし、飲食費については特別な取り扱いがあります。
アメリカの場合
アメリカでは次の3つに分けて、損金算入額の計算を行います。
(1) 交際費(entertainment)
スポーツの試合の観戦やゴルフ、劇場での接待などです。
(2) 飲食費(meals)
事業上の飲食費が該当します。
(3) 事業上の贈答品(business gift)
事業目的のクライアント等に対する贈答品です。
日本とアメリカの共通点
例えば飲食費の場合、「相手方の名称」「場所」「日時」「目的」などを明確にしなければならない点は同様です。
日本とアメリカの相違点
交際費等を支払った場合の日本の取り扱い
日本では交際費等の額は、法人の区分に応じ、一定額の損金算入できます。
(1) 中小法人
支出した交際費等のうち、次のいずれかの金額まで損金に算入できます。
① 年800万円
② 接待飲食費の50%
・中小法人とは
資本金が1億円以下であれば「中小法人」に該当します。ただし、大法人の100%子会社である場合など、一定の法人は除かれます。大法人とは、資本金の額が5億円以上の法人などを指します。
(2) 中小法人以外の法人
原則として損金算入が認められていません。ただし、中小法人以外の法人で事業年度終了日における資本金の額等が100億円以下の場合は、原則として、接待飲食費の50%の損金算入が認められています。
・日本の個人事業主の場合
個人事業主の場合、上記の法人のように、必要経費に計上できる交際費等に上限が設けられていません。従って、事業との関連性が明確であれば全額を必要経費に計上することができます。
日本の中小法人と、アメリカのS corporation(小規模法人)については、次の記事で詳しく解説しています。
交際費等を支払った場合のアメリカの取り扱い
(1) 交際費(entertainment)
スポーツの試合の観戦やゴルフ、劇場での接待などは全額損金不算入となります。
(2) 飲食費(meals)
飲食費は、支払った金額の50%部分が損金として認められています。
(3) 事業上の贈答品(business gift)
一つの課税年度につき、一人当たり$25までという制限があります。
例)A法人が、Bに$15、Cに$50の贈答をした。
必要経費に計上できる金額は、$40までとなります。
・計算式:$15(B)+$25(C)=$40
・アメリカの「個人」と「法人」の交際費等の取り扱い
日本のように法人と個人で交際費等の取り扱いを分けていません。従って、アメリカでは同じ規定が法人と個人に適用されます。
根拠法令等
措置法 第六十一条の四(交際費等の損金不算入)
所得税法 第三十七条(必要経費)
26 U.S.C. § 274 – U.S. Code – Unannotated Title 26. Internal Revenue Code § 274. Disallowance of certain entertainment, etc., expenses