税理士・米国公認会計士 林 正和(Tax Accountant・USCPA Washington Masakazu Hayashi)

日本とアメリカの税法の違い【医療費控除】

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日本とアメリカの医療費控除を比較し、相違点について、税理士・USCPA(米国公認会計士)が解説します。

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概要

日本の医療費控除(medical expenses deduction)と同様の制度が、アメリカにもあります。ただし、医療費控除の対象となるものや、計算方法に違いがあります。

医療費控除とは?

日本における医療費控除とは、個人の所得税(individual income tax)の制度です。自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合に、一定額の所得控除を受けることができます。つまり納める所得税が少なくなります。アメリカにも同様の制度があります。

日本とアメリカで医療費控除の対象となるものの例

次のような支払いは、日本でもアメリカでも医療費控除の対象となります。

・診察費
・医師の処方箋による医薬品の購入
・通院にかかった交通費
・補聴器の購入

日本とアメリカで医療費控除の対象とならないものの例

日本でもアメリカでも美容整形(cosmetic surgery)は、ほとんどの場合、医療費控除の対象外です。

日米で取扱いが異なるものの例

薬局での市販薬(over-the-counter medicines)を購入

日本では医療費控除の対象です。

これに対して、アメリカでは薬局での市販薬の購入は医療費控除の対象外です。アメリカでは、医師の処方箋による医薬品(prescription medicines)の購入でなければ対象となりません。

眼鏡・コンタクトレンズの購入(一般的な近視や遠視の矯正が目的の場合)

日本では医療費控除の対象外です。

これに対して、アメリカではメガネ・コンタクトレンズの購入は対象となります。アメリカでは、近視や遠視の矯正も治療目的と考えているのだと思われます。

救急車(ambulance)の費用

アメリカの医療費控除に特徴的なものとして、救急車の費用も対象となります。日本の救急車は無料ですが、アメリカでは有料です。料金はケースにより異なりますが、1回の要請で数万円から10万円を超える場合もあるようです。

その他の相違点

その他、日本では医療費控除の対象外ですが、アメリカでは医療費控除の対象となるものとして、次のようなものがあります。

・車椅子の購入費用

・盲導犬の購入費用およびその飼育費用

医療費控除額

日本の場合

次の算式で計算した金額を、所得から控除できます。

(実際に支払った医療費の合計額 - ①の金額)- ②の金額(最高200万円)

① 保険金などで補てんされる金額

アメリカの場合

医療費控除は、項目別控除(itemized deduction)の一つとなっていてSCHEDULE A(Form 1040)で計算します。

調整総所得(Adjusted Gross Income : AGI)(※1)の7.5%を超える金額が控除可能です。

医療費(medical and dental expenses)-AGI×7.5%=控除可能額

日本と同様に、保険会社等から払い戻しを受けた金額は控除する必要があります。

日本の場合は、原則として10万円を超えた部分が医療費控除の対象となりますが、アメリカの場合はAGIの7.5%となっており、AGIにより控除額が変動します。

(※1) 調整総所得(AGI)とは、総所得(Gross Income)から調整総所得前控除(above the line deductions)(※2)を控除した金額となります。

(※2) 調整総所得前控除(above-the-line deductions)には、例えば自営業者税(self-employment tax)の半分や、退職年金の積立(contribution for retirement plan)があります。

根拠法令等

所得税法 第73条(医療費控除)

26 U.S.C. § 213 – U.S. Code – Unannotated Title 26. Internal Revenue Code § 213. Medical, dental, etc., expenses

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